2020年秋学期 - 政治哲学（現代） / CONTEMPORARY POLITICAL PHILOSOPHY
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C1148 政治哲学（現代） CONTEMPORARY POLITICAL PHILOSOPHY |
特設科目 Special Seminars 2 単位 |
| 実施形態 | 完全オンライン |
| 開催日程 | 秋学期 火曜日３時限 |
| 担当教員 | 宮代 康丈（ミヤシロ ヤスタケ） |
| 関連科目 |
前提科目（推奨）: C1147,90613 |
| 開講場所 | オンライン |
| 授業形態 | 講義 |
| 履修者制限 |
履修人数を制限する Only the selected students can take this course. |
| 履修条件 |
なぜあなたはこの授業の履修を希望するのかという点を説明した志望理由書（800字以内）を提出してください。 Submit by e-mail a brief essay in Japanese (within 800 characters, “moji”), explaining why you want to participate in this lecture class. |
| 使用言語 | 日本語 |
| 連絡先 | miyasiro@sfc.keio.ac.jp |
| 授業ホームページ | |
| 同一科目 | |
| 学生が利用する予定機材/ソフト等 | |
| 設置学部・研究科 | 総合政策・環境情報学部 |
| 大学院プロジェクト名 | |
| 大学院プロジェクトサブメンバー | |
| ゲストスピーカーの人数 | 0 |
| 履修選抜・課題タイプ=テキスト登録可 | true |
| 履修選抜・選抜課題タイプ=ファイル登録可 | false |
| GIGAサティフィケート対象 | |
| 最終更新日 | 2020/07/18 17:17:35 |
科目概要
この講義の目的は、現代の政治哲学で議論されている主要な考えと争点を理解することである。政治哲学の特色は、狭義の政治学や政治社会学と違い、規範的アプローチを取ることにある。規範理論としての政治哲学は、とりわけ1971年にアメリカの政治哲学者ジョン・ロールズが『正義論』を出版して以来、現在に至るまで、めざましい発展を続けている。この現代政治哲学は、いったいどのような問題に関心を向け、どのような考えを提示しているのか。講義の第1部では、1970年代以降の政治哲学の争点を理解するための下地として、近代哲学に対してどのような批判が行われていたのかという点を確認する。第2部では、現代政治哲学の各立場を分かつ論点を捉えるために、自由という価値に関する三つの異なる捉え方を検討する。第3部では、ロールズの正義論を最初に取り上げ、その後で、彼のリベラリズムに対する三つの批判を順次考察する。第4部では、現代の社会状況・世界状況のなかで生じている具体的な問題に対して政治哲学がどのようにアプローチしているかという点を、文化、ジェンダー、グローバル正義という三つのテーマを取り上げて議論する。
This course aims to give students an overview of main issues discussed in contemporary political philosophy. Political philosophy is distinguished from political science or sociology in that it adopts principally normative approach. As normative theory, political philosophy has made a remarkable revival and development since John Rawls, American philosopher, published A Theory of Justice in 1971. What problems does contemporary political philosophy focus on? How does it attempt to solve those problems? The first part of this course makes clear a variety of criticisms addressed to modern political philosophy in order to understand the issues that contemporary theories have raised since the 1970’s. The second deals with three conceptions of freedom, each of which represents particular position in contemporary political philosophy. The third explains fundamental ideas of Rawlsian theory of justice, and also three criticisms directed towards his liberal conception. The fourth shows how political philosophers tackle concrete issues raised by today's social and global situation, particularly with regard to culture, gender, and global justice.
授業シラバス
主題と目標／授業の手法など
この講義の目的は、現代の政治哲学で議論されている主要な考えと争点を理解することである。政治哲学の特色は、狭義の政治学や政治社会学と違い、規範的アプローチを取ることにある。規範理論としての政治哲学は、とりわけ1971年にアメリカの政治哲学者ジョン・ロールズが『正義論』を出版して以来、現在に至るまで、めざましい発展を続けている。この現代政治哲学は、いったいどのような問題に関心を向け、どのような考えを提示しているのか。講義の第1部では、1970年代以降の政治哲学の争点を理解するための下地として、近代哲学に対してどのような批判が行われていたのかという点を確認する。第2部では、現代政治哲学の各立場を分かつ論点を捉えるために、自由という価値に関する三つの異なる捉え方を検討する。第3部では、ロールズの正義論を最初に取り上げ、その後で、彼のリベラリズムに対する三つの批判を順次考察する。第4部では、現代の社会状況・世界状況のなかで生じている具体的な問題に対して政治哲学がどのようにアプローチしているかという点を、文化、ジェンダー、グローバル正義という三つのテーマを取り上げて議論する。
This course aims to give students an overview of main issues discussed in contemporary political philosophy. Political philosophy is distinguished from political science or sociology in that it adopts principally normative approach. As normative theory, political philosophy has made a remarkable revival and development since John Rawls, American philosopher, published A Theory of Justice in 1971. What problems does contemporary political philosophy focus on? How does it attempt to solve those problems? The first part of this course makes clear a variety of criticisms addressed to modern political philosophy in order to understand the issues that contemporary theories have raised since the 1970’s. The second deals with three conceptions of freedom, each of which represents particular position in contemporary political philosophy. The third explains fundamental ideas of Rawlsian theory of justice, and also three criticisms directed towards his liberal conception. The fourth shows how political philosophers tackle concrete issues raised by today's social and global situation, particularly with regard to culture, gender, and global justice.
教材・参考文献
参考文献は、以下の「授業計画」の欄に各回ごとに示す。
See below,“Class Schedule”.
提出課題・試験・成績評価の方法など
授業への参加、および期末筆記課題の結果を総合的に見て判断する。
Attendance, term paper
履修上の注意
授業計画
第1回 近代から現代へ
[From Modern to Contemporary]
近代以降の社会にはどのような問題があり、またその問題についてどのような哲学上の議論があるのか。個人主義、道具的理性、自由の喪失という三つの論点を検討しながら、現代の政治哲学で議論されている問題群を理解するための糸口を掴む。
課題図書：Ch. テイラー『「ほんもの」という倫理 ― 近代とその不安』
Readings: Charles Taylor, The Ethics of Authenticity.
第2回 相対主義 ―「神々の闘争」？
[Relativism: the “War of gods”?]
自由や平等といった価値に関わる問題について、客観的な議論をすることはできるか。多様な価値観が衝突した場合、なんらかのコンセンサスを目指して論拠を交換することには意味があるか。それとも、価値の問題については、理性に基づく検討はそもそも不可能で、ただ主観的な意見を述べうるだけなのか。こうした一連の問題を念頭に、この回では相対主義の問題を検討する。
課題図書 : M. ヴェーバー『職業としての学問』 ・『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」 』、L. シュトラウス『自然権と歴史』
Readings: Max Weber,“Science as a Vocation”, and “Objectivity in Social Science and Social Policy”. Leo Strauss, Natural Right and History.
第3回 理性の根拠？
[Ground of Reason?]
理性に対する批判は、合理主義の内部からもおこなわれることがある。理性それ自体の正しさを論証することはできるのか。そもそも、なぜ理性に従うべきなのか。理性に従うかどうかは、究極的には選択の問題にすぎないのではないか。これらの問いをめぐって生じる規範上の問題について、批判的合理主義と決断主義と呼ばれる二つの立場を取り上げて考察する。
課題図書: K. ポパー『開かれた社会とその敵』、H. アルバート『批判的理性論考』
Readings: Karl Popper, The Open Society and Its Enemies. Hans Albert, Treatise on Critical Reason.
第4回 自由（１）：消極的自由と積極的自由
[Freedom (1) : Negative liberty and positive liberty]
この回では、現代社会において重要な価値の一つである自由について、政治哲学がどのような議論をおこなっているのかを見る。とりわけ、消極的自由と積極的自由という区別を検討する。
課題図書：I. バーリン『自由論』
Readings: Isaiah Berlin, “Two Concepts of Liberty”.
第5回 第6回 自由（２）：非干渉・自己実現・非支配
[Freedom (2) : Non-interference, self-realization, and non-domination]
人は、国家による制約が少なければ少ないほど、それだけ自由なのだろうか。法律は、人々の自由を守っているのだろうか、それとも妨げているのだろうか。この回では、非干渉・自己実現・非支配という三つの自由観を検討する。
課題図書：Q. スキナー『自由主義に先立つ自由』、Ph. ペティット『共和主義』（未訳）
Readings : Quentin Skinner, Liberty before Liberalism. Philip Pettit, Republicanism.
第6回 リベラリズム
[Liberalism]
1970年代以降の現代政治哲学における主要な理論を理解するために、まずロールズの『正義論』（1971年）の骨格を捉える。とりわけ、正義の二原理、原初状態、無知のヴェール、基本財といった根本の考えを理解することを目指す。
課題図書：J. ロールズ『正義論』
Readings: John Rawls, A Theory of Justice.
第7回 共同体主義
[Communitarianism]
ロールズの『正義論』に対する批判は数多い。この回では、共同体主義と一般に呼ばれる立場からの批判を取り上げる。とりわけ、近代以降の社会における個人と政治共同体の関係を軸に、共同体主義によるリベラリズム批判を考察する。
課題図書：M. サンデル『リベラリズムと正義の限界』・『民主政の不満』
Readings: Michael J. Sandel, Liberalism and the Limits of Justice, and Democracy's Discontent.
第8回 リバタリアニズム
[Libertarianism]
国家が経済格差を是正することは正当か。どこまで個人の権利、とりわけその所有権は譲れないものなのか。この回では、個人権の不可侵性という観点からなされるリベラリズム批判として、リバタリアニズムと呼ばれる立場を取り上げる。
課題図書：F.-A. ハイエク『法と立法と自由』、R. ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』
Readings: F. A. Hayek, Law, Legislation and Liberty. Robert Nozick, Anarchy, State, and Utopia.
第9回 現代共和主義
[Neo-republicanism]
政治的自由の意味を非支配として捉えることで、リベラリズムへの批判を展開する現代共和主義の主張を考察する。
課題図書：J. G. A. ポーコック『徳・商業・ 歴史』、M. J. サンデル『民主政の不満』、M. ヴィローリ 『パトリオティズムとナショナリズム』
Readings: J.G.A Pocock, Virtue, Commerce, and History. Michael J. Sandel, Democracy’s Discontent. Maurizio Viroli, For Love of Country.
第10回 多文化主義
[Multiculturalism]
「多元性の事実」（J. ロールズ）を特徴とする民主社会において、多様な文化を包括しうるシティズンシップはどのようなものであるべきか。さまざまな文化集団の要求をどのように、またどこまで認め、受け容れるべきか。文化的アイデンティティーに関する権利要求の問題をこの回では取り上げる。
課題図書：Ch. テイラー他『マルチカルチュラリズム』 、W. キムリッカ『多文化時代の市民権 : マイノリティの権利と自由主義』
Readings: Charles Taylor, “The Politics of Recognition”. Will Kimlycka, Multicultural Citizenship: A Liberal Theory of Minority Rights.
第11回 ジェンダーの不平等
[Gender Inequality]
男女に違いがあるのは当たり前か。その違いが不平等としてあらわれることは当たり前か。どのような違いであれば正当だと見なせるか。この回では、ジェンダーによってもたらされる不平等の問題を、とりわけ自立と依存、また正義とケアという二つの観点から検討する。
課題図書：S.M. オーキン『正義・ジェンダー・家族』、E.F. キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』
Readings: Susan Okin, Justice, gender, and the family. Eva Kitay, Love's Labor.
第12回 ナショナリズムとコスモポリタニズム
[Nationalism and Cosmopolitanism]
われわれには自国の貧困層のみならず、他国で困窮に苦しむ人々をも助ける義務があるか。もしあるとすれば、その義務の性質は自国の場合と他国の場合で変わるか。また、自国の状況改善よりも他国のそれを優先すべきケースはあるか。この回では、グローバルなレベルでの不平等の問題について、リベラル・ナショナリズムとコスモポリタニズムという二つの立場を取り上げる。
課題図書：J. ロールズ『万民の法』、D. ミラー『国際正義とは何か』、T. ポッゲ『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか』
Readings: John Rawls, The Law of Peoples. David Miller, National Responsibility and Global Justice. Thomas Pogge, World Poverty and Human Rights.
第13回 期末筆記課題講評
[Comments on term paper]
期末筆記課題の講評
Comments on term paper
第14回 理性批判・主体性批判
[Critique of reason, critique of subjectivity]
近代に特有の問題は、理性や主体性といったものに根拠を求めるある種の哲学に原因があるのではないか。人間主義に何か根本の間違いがあるのではないか。このような反人間主義・反主体主義による批判を取り上げる。
philosophical debats on antihumanism and antisubjectivism
第15回 政治哲学のリミット
[Limits of political philosophy]
これまでの回で扱った争点・立場を振り返るとともに、政治哲学はどこまで具体的な問題に踏み込めるのかというリミットの問題を考察する。
Summary of key points
15回目に相当するその他の授業計画
試験講評
Comments on final exam.