2020年秋学期 - 改革とイノベーション / REINVENTION AND INNOVATION OF THE SOCIAL SYSTEM AND ORGANIZATION
| C1162 改革とイノベーション REINVENTION AND INNOVATION OF THE SOCIAL SYSTEM AND ORGANIZATION |
先端科目-総合政策系 Advanced Subjects - Series of Policy Management 2 単位 |
| 実施形態 | 完全オンライン |
| 開催日程 | 秋学期 月曜日2時限 |
| 担当教員 | 上山 信一(ウエヤマ シンイチ) |
| 関連科目 | 前提科目(推奨): B6030 前提科目(関連): 65010,C1088,C1050,C1004,C1148,C1147,B6180,C1006 |
| 開講場所 | ZOOM |
| 授業形態 | 講義、実習・演習、遠隔あり |
| 履修者制限 |
履修人数を制限する Only the selected students can take this course. |
| 履修条件 |
社会思想、近代啓蒙思想のほか世界史の素養があると理解しやすい N.A. この授業は、反転授業形式、すなわち毎回、事前に指定された資料を読んできたことを前提に進みます。毎回の授業は予習課題(ほぼ毎回)の提出、発表、グループ討議、全体討議の流れが基本です。講義中心の回もありますが、ほぼ毎週、一定量の文献を読み、予習レポートを提出する必要があり、予習復習に割く時間と余裕がある学期に履修してください。 Pre-reading of Japanese documents |
| 使用言語 | 日本語 |
| 連絡先 | ueyama@sfc.keio.ac.jp |
| 授業ホームページ | |
| 同一科目 |
|
| 学生が利用する予定機材/ソフト等 |
ZOOM N.A. |
| 設置学部・研究科 | 総合政策・環境情報学部 |
| 大学院プロジェクト名 |
|
| 大学院プロジェクトサブメンバー |
|
| ゲストスピーカーの人数 | 1 |
| 履修選抜・課題タイプ=テキスト登録可 | true |
| 履修選抜・選抜課題タイプ=ファイル登録可 | false |
| GIGAサティフィケート対象 | |
| 最終更新日 | 2020/09/01 09:17:55 |
科目概要
この科目では、履修者が卒業後に企業、政府、NPO等で組織や社会の改革やイノベーションを先導する際に必要となる世界観、課題認識力、リーダーシップ等のスキルを総合的に養います。
具体的には、講師が改革のキャタリスト(触媒役)を担った政府、企業、財団等の合計約50の組織での経験、及び古今東西の改革とイノベーションの事例研究に基づき、改革とイノベーションの本質とその方法論、そこで必要とされる社会と組織に対する洞察力を養います。
内容としては①世界秩序の見方(ウエストファリア体制、パクスアメリカーナ、国連中心主義、華夷秩序等)、②近代国家の基盤構造(民主主義、資本主義、国民国家、官僚主義等)、③社会変革の動向(地方分権、IT化、グローバル化など)の本質を見たうえで、イノベーションの例として「保険」「コンテナ」「新幹線」などの制度/サービスや「裁判」「議会制民主主義」「義務教育」などの社会的イノベーションへの洞察を深めます。授業ではこうしたイノベーションが生まれ、定着する過程で起きた改革(時には「革命」)の経緯をたどり、次の時代を切り拓く改革とイノベーションの方法を考えます。
(注)ちなみにSFCには「イノベーション」「社会システム」「リーダーシップ」に関する演習科目が他にもいくつかあります。これらに比べて本科目は古典や名著と歴史上の事象を手掛かりに反転授業スタイルで社会と組織の「改革」と「イノベーション」の本質を洞察するものであり、演習型科目とは補完的な学習効果が生まれるよう設計しました。
Reform and Innovation
授業シラバス
主題と目標/授業の手法など
1.主題
この授業では前半(1−5回)で「改革とは何か」について、また「世界観」「日本国のビジネスモデル」「技術イノベーション」「シンギュラリティ」のテーマに沿って人類の歴史を振り返りながら世界と日本をどうとらえるか、頭の中の座標軸の構築を目指します。
中盤(6−9回)では現代社会がよりどころにする「資本主義」「民主主義」とその背景にある「宗教、思想、理念」を探り、あわせてその先に芽生えつつある「新知性(”つながり””共感””対話””直感”など)」について考えます
そのうえで後半(10−12回)は日本特有の組織の硬さやタテ社会の特性を解明しそれを動かすための組織・リーダーシップのあり方を考え、同時に各自が取り組んでみたいことへの改革アプローチを考えます(最終レポート)。
2.獲得スキル
この授業では世界の成り立ちについての知識と世界観を得るとともに、それを卒業後も持続的にアップデートし、また目の前の課題の改革方法を設計できるスキルの習得を目指します。
3.授業形式は、①古典等の名著購読(事前に読了してくる反転授業形式)、②購読に基づくレポート作成、③班別ディベート、④各自が決めたテーマについての改革提言書作成等を組み合わせて進めます。
N.A.
教材・参考文献
毎回の授業の欄に記載。なお、必要な資料は原則としてPDFで配布します。また毎回の文献は原則として抜粋して読み、対象個所はPDFで提供します。
提出課題・試験・成績評価の方法など
出席状況、発言、グルワへの貢献、レポート評価(中間、最終各100点)を総合して成績評価をします(毎回のミニレポートに50点配点)。なお3回以上欠席すると単位取得できなくなります(病気、忌引きなど合理的理由がある場合を除く。ただし当日朝10:30までに
office-ueyama@forest.ocn.ne.jpにメールで報告することが条件。教員やSAへのメールでの申告はできません)。また10分以上遅刻すると0.5回分、30分以上の遅刻をすると1回分の欠席となります。
N.A.
履修上の注意
読み、書き、語り、洞察する力はつきます。しかし、なかなかきついです。たくさんの本を読み、レポートを書く覚悟が必要です。
N.A.
授業計画
第1回 世界観――世界の成り立ち方を理解する
シラバスに沿って授業の全体像を紹介したあと、世界観、つまり社会、歴史を構造的にとらえる座標軸の作り方をトレーニングします。将来展望となるとハイテクに注目が集まりがちですが、世の中の動向は権力者の意思、戦争、天災、疫病など様々な要素で決まります。今回は宗教、理念・思想(啓蒙思想、民族主義、共産主義)、経済を軸に社会の全体構造をとらえる各種の世界観を学び、履修者各自が自身の世界観を造ってみます。
●必読文献:萱野稔人「国家とは何か」(以文社、最初から137Pまで)、「入門世界システム分析」(ウォーラシュタイン、1-3章、6=あとがき)
〇参考文献 「遊牧民から見た世界史」(杉山)、「海と陸と」(シュミット)、「最終戦争論」(石原莞爾)、「ファクトフルネス」、「新世界秩序」(アタリ)、中西輝政「帝国としての中国」(東洋経済新報社)、「すでに起こった未来―変化を読む眼」(ドラッカー)、「文明が衰亡するとき」(高坂)
第2回 日本国のビジネスモデル――持続可能性の検証
戦後のわが国の発展は世界史の中でも有数の偉業と称賛されましたが近年は停滞が目立ちます。しかし日本は江戸時代にすでに世界有数の都市文明を構築し、その蓄積の上に明治維新と近代日本の発展がありました。この回ではそうした歴史を掘り起こしつつ、今後の日本の国家経営の方向を「ビジネスモデル」の考え方を手掛かりに考えます。
●必読文献:高坂正堯「海洋国家日本の構想」(中公クラシクス、ただし173P−259Pのみ)、上山信一著「大阪維新」(角川SCC新書)
〇参考文献:吉村・松井・上山「大阪から日本が変わる」(朝日新書)、福沢諭吉「現代語訳 文明論之概略」(ちくま文庫)、司馬遼太郎「新装版 明治という国家」(NHKブックス)
第3回 「革命」「改革」「改善」はどう違うのか?
イノベーションが実際に普及し、実現するためには既成の秩序や慣性を変えなければなりません。そのためには組織や社会の改革が必要です。まずは組織を改革する。それができたらそこをベースにイノベーションを梃子として他の組織や社会のありようを変えていくのです。この回では大企業、自治体、中央省庁など様々な機関の改革に携わってきた講師と組織と社会の「改革」の本質について考えます。そのうえで組織における「日常」と「改善」、「改善」と「改革」の違い、さらに社会全体に視野を広げ、「革命」とは何かについて考えます。
●必読文献 上山信一「組織がみるみる変わる改革力」(朝日新書)
第4回 改革と社会的イノベーションの歴史
近代以降では、新技術やノウハウ、つまりイノベーションが次の時代の扉を開きました。信長の天下取りでは鉄砲が、宗教改革では活版印刷が、国民国家の成立には代議制民主主義と徴兵制度が決め手となりました。また戦後世界の発展にはコンテナ定期航路が、日本の高度成長では東海道新幹線が不可欠でした。今回は社会を大きく変え、歴史を転換させたイノベーション(技術、ソフトなノウハウの両方)を洗い出し、その影響力を振り返ります
◎必読文献 ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」(草思社、抜粋)
〇参考文献 野口悠紀雄「世界史を創ったビジネスモデル」(新潮選書)
第5回 21世紀後半の未来を考える――テクノユートピアとディストピア
「先が見えない時代」と言われます。そして中長期の人類の未来については悲観的(ディストピア)な想像をする歴史家(ジャックアタリ、ピケティ、ユヴァル・ノア・ハラリ等)もいます。一方、政府、エコノミスト、研究者、企業の多くはハイテクを生かした明るい未来を描きがちです。真実はだれにもわかりませんがこの回では専門家の未来感を見たうえで個々の受講者が考える未来を共有化します
◎必読文献 ジャックアタリ「21世紀の歴史――未来の人類から見た世界」(作品社、全体)
〇参考文献 ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス」(河出書房新社)、トマ・ピケティ「21世紀の資本」(みすず出版)
第6回 資本主義ーーダイナミズムと制度疲労
近代以降の世界の発展と人口増は産業革命と化石燃料の活用、そして資本主義経済の発展が支えました。しかし、その制度疲労と終焉が指摘されています。ここでは資本主義の源泉、ダイナミズム、そして人間疎外や環境破壊などの負の部分を考えます。
◎必読文献 村上泰亮「産業社会の病理」(中公クラシックス、最初から242Pまで)、レーニン「帝国主義論」(抜粋)
〇参考文献 シュンペーター「資本主義・社会主義・民主主義」(名古屋大学出版会)、マルクス「共産党宣言」
第7回 民主主義――進化の経過と今後の展望
近代社会は国家を基礎単位に資本主義と民主主義が支えてきました。ところが昨今は経済の停滞を機にいわゆるポピュリズム、衆愚政治の抬頭が見られます。そもそも民主主義はなぜ近現代国家の基盤にあるのか、なぜ機能しなくなったのか、今後はどうあるべきか、を考えます
◎佐々木毅「民主主義という不思議な仕組み」(ちくまプリマ―新書)
〇参考文献 「民主主義の非西洋起源について:「あいだ」の空間の民主主義」(デヴィッド・グレーバー)、オルテガ「大衆の反逆」(中公クラシクス)
第8回 宗教、思想、理念−−どこから生まれ、どう社会を変えるのか
何が歴史を動かすのでしょうか。技術革新、経済、パンデミック、戦争、気候変動など要素は様々ですが、宗教、思想、理念が果たす役割はとても大きいです。典型がナチズムや共産主義でしょう。中世ヨーロッパなどでは宗教が価値判断のよりどころでした。そして吉田松陰やレーニンなどの革命思想やルソーなどの近代啓蒙思想。第8回はこうした思想や価値観がどうやって生まれ、どのように社会に影響を与えて来たのか、そのメカニズムを探ります。
●必読 「宗教社会学」(ウェーバー、創文社、抜粋)、「歴史哲学講義」(ヘーゲル、岩波文庫、抜粋)
〇参考 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「宗教と権力の政治」(佐々木、講談社学術新書)、ハーバーマス「公共性の構造転換」
第9回 新知性の芽生えーー東洋哲学と量子論を手掛かりに
「共感」と「対話」「主客融合」「等身大」といったキーワードに注目が集まっています。民主主義の多数決や資本主義の拡大再生産といった原理を問い直す動きもでています。「熟議」や「利他主義」がそうです。第9回では第7回でみた近現代の理念がどう変わりつつあるのか、またその手がかりとしてなぜ、量子力学と東洋哲学への関心が高まっているのかを考えます。
●必読文献
「科学とは何か」(湯川&梅棹)、「世界は分けてもわからない」(福岡伸一)
〇参考文献 「量子力学が明らかにする存在、意思、生命の意味」(山田廣成、光子研出版)
第10回 リーダーシップー誰が、なぜ、どうやって厳しい戦いを導いてきたのか
改革、そして社会的イノベーションとは既成の秩序への挑戦であり、直接、あるいは間接の権力闘争を伴います。大義を掲げつつ、時には人間性と対立しうる権力闘争にどう立ち向かうか。今回は、福澤先生、マキアベリ、孫氏の兵法、マンデラ等の著作を手掛かりに先導者の心構えについて考えます
◎必読文献 マックス・ウェーバー「支配の3類型」(創文社、抜粋)、マキアベリ「君主論」(中公文庫)、「孫氏の兵法」(三笠書房)
〇参考文献:リチャード・ステンゲル「信念に生きる――ネルソン・マンデラの行動哲学」(抜粋、英治出版)
第11回 日本の組織を動かすーーなぜ天皇制への洞察が欠かせないのか
しばしば「日本は島国で保守的」と言われますが本当に保守的なら経済成長はなかったでしょう。しかし国の規制緩和や大企業の改革は遅く、ベンチャーの発展も今一つです。原因はしばしば政治の貧困、教育、あるいは既得権益層への配慮や危機感の欠如と指摘され、あるいは島国の風土や万世一系といわれる天皇制に求める向きもあります。今回は「日本の保守性」の真偽を問い、その源泉を探り、対処策を考えます
◎必読文献:岸俊男「安心社会から信頼社会へ」第1章・第5章(中公新書)、内藤湖南「東洋文化史」(中公クラシクス、最初から106P,161〜248P.)、与那覇潤「中国化する日本増補版」(文春文庫、抜粋)
〇参考文献:井沢元彦「仏教・神道・儒教集中講座」(徳間文庫)、山松本健一「「孟子」の革命思想と日本―天皇家にはなぜ姓がないのか」(抜粋)、中根千絵「タテ社会の人間関係」(講談社新書)
第12回 まとめ
今まで学んだ事をもとにあなたが考える改革論を準備してきてください(課題提示は第6回に行い、個人研究で準備を始めてもらいます(成果物は中間レポートで各自、提出し、講師がフィードバックします。テーマは様々で「○○村の過疎問題」「xx学校の学級崩壊」「東京都の行政改革」など具体的組織が提示してあればOK。この日は準備してきた資料をもとにブレークアウトルームでグループ討議し、ヒントをお互いに与えあってください。そのうえで最終レポートを書いてください。
第13回 自習課題:改革とイノベーションに取り組むチームを作る
以下は、自習課題です。
改革や社会的なイノベーションを実現するには、ビジョンを掲げ、組織を作り(ベンチャー起業、政党組織化、選挙立候補、NPO旗揚げなど)、意見を訴え、仲間を募り、アクションの連鎖を拡大しなければなりません。そこでは論理や数字のほか人間力や魅力も大切です。カンパニー(社中)立ち上げの勘所をアントレプレナーたちの著作に探ります。
◎ D・カーネギー「人を動かす」(創元社文庫)
〇P・F.ドラッカー「プロフェッショナルの条件」(ダイヤモンド社)
第14回 中間レポートをもって充てる
15回分を確保するため中間レポートを課します(提出時期は第6回あたり)
第15回 最終レポートをもって充てる
15回分を確保するため最終レポートを課します
15回目に相当するその他の授業計画
レポートを2回課します
N.A.