B6181
政策形成とメディア
POLICY-MAKING AND MEDIA
基盤科目-共通科目
Fundamental Subjects - Interdisciplinary Subjects
2 単位
実施形態 完全オンライン
開催日程 秋学期 金曜日5時限
担当教員 原田 亮介:大石 格:池田 元博:西條 都夫:田中 暁人:中澤 克二:藤井 彰夫:松尾 博文:峯岸 博:飯野 克彦:大林 尚(ハラダ リヨウスケ:オオイシ イタル:イケダ モトヒロ:サイジヨウ クニオ:タナカ アキト:ナカザワ カツジ:フジイ アキオ:マツオ ヒロフミ:ミネギシ ヒロシ:メシノ カツヒコ:オオバヤシ ツカサ)
関連科目
開講場所 SFC
授業形態 講義
履修者制限

履修人数を制限する

受入学生数(予定):約 100 人
選抜方法:システムによる選抜(抽選)

◯エントリー〆切日時:2020年9月28日(月) 17:00
◯履修許可者発表日時:2020年9月30日(水) 17:00

Only the selected students can take this course.

Number of students in the class (scheduled) : About 100
Automatic Screening (Lottery)

* Schedule: TBD

履修条件

使用言語 日本語
連絡先 ryosuke.harada@nex.nikkei.com
授業ホームページ
同一科目

学生が利用する予定機材/ソフト等

設置学部・研究科 総合政策・環境情報学部
大学院プロジェクト名

大学院プロジェクトサブメンバー

ゲストスピーカーの人数 0
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GIGAサティフィケート対象
最終更新日 2020/07/30 14:18:31

科目概要

本講義ではメディアが政策形成に果たす役割について多面的に論じる。メディアは、行政、立法、司法に次ぐ第四の権力と呼ばれる。かつては新聞やテレビといったマスコミュニケーションが主だったが、ここにはインターネットなどの電子メディアも加わるようになっている。しかし、メディアが権力のチェック機能を果たすとともに、世論形成に果たす役割も大きい。権力のチェックと世論形成という二つの役割は、政策形成においても重要な役割を果たすことになる。行政において政権を担う人々、立法において法案作成を担う人々は特に新聞の社説が持つ力を重視している。本講義では、日本経済新聞において社説や署名入りコラムを担う論説委員および編集委員たち11名が、それぞれが専門とする分野における政策形成にメディアが果たす役割について論じる。
13回の講義のうち前半はデジタル化によるメディアの変容や国内の政策形成との関係を論じ、後半は米国や中国、韓国など各国の政策形成とメディアの関係を論じる。

授業シラバス

主題と目標/授業の手法など

ネット上のニュースや言論が情報接触の機会として比重を高める中、「政策形成」にメディアがどう関わっているか、社説の比較などを通じて紹介する。そこで媒体ごとに主張が異なることも明らかにし、メディアは言葉通り「媒体」であって、重要なのはコンテンツであることの理解を深める。

後半は海外でのメディアと政策形成の関わりを国や地域ごとに論じる。トランプ大統領のツイッター政治で世論形成はどうかわったのか、中国の習近平体制下で新型コロナウイルスの流行阻止にどのように言論が関わったのかなど、今日的なテーマをとりあげる。中東やロシア、韓国など日本国内からみると理解できないニュースを読み解けるようにする。

原則的にPWPによる授業形式をとる。メデイアの変容により、世論が政治などから積極的に働きかける対象になっていることを理解する。

教材・参考文献

Oxford Univ Reuters Institute for the Study of Journalism、Digital News Report 2019。中澤克二、習近平の暗号、日本経済新聞出版社、2018。山本康夫、メディアとジャーナリズム、産経新聞出版、2012年。ビル・コヴァッチ、トム・ローゼンスティール、ジャーナリズムの原則、日本経済評論社、2002。小口日出彦、情報参謀、講談社現代新書、2016。新聞の正しい読み方、松林薫、2016。アメリカ大統領選、大石格、日本経済新聞出版社、2019。

提出課題・試験・成績評価の方法など

学期末に、リポートを提出させるか、「政策形成とメディア」に関する論文記述を試験として課するかを検討中。いずれにしてもオンラインで実施する予定

履修上の注意

授業計画

第1回 【メディアの変容と社説】

 活版印刷以来のメディア革命は何をもたらすのか。新興メディアはどう攻め、伝統メディアはその苦境をどう乗り越えようとしているのか。伝統メディアが東西を問わず今も掲載を続ける社説にはどのような価値があるのか。すべての意見が相対化されるなかで、世論の分断は回避できるのか。本講義の1回目として、俯瞰図を紹介し、問題意識を刺激したい

原田


第2回 【日本政治とメディア】

 新聞、ラジオ、テレビ、インターネットとメディアの変遷は政治にどのような影響を与えてきたか。「ネット」の扱いに手慣れた「れいわ新撰組」などの新潮流は政治にどのような影響を与えるのか。18歳投票権が選挙運動に影響を与えた部分はあるのか。新聞の社説は大きな政策決定に関して相当に個別社ごとに違っているが、そうした実例も示しながら社説と世論、政治の関係を論じる。

大石


第3回 【経済政策とメディア 上】

リフレ策やMMTなどの政策提言の一方で、それを「政策イデオロギー」化する動きが続いている。国土強靱(きょうじん)化もそう。柔軟で現実的な政策決定のために何が必要か、メディアの役割は何かを議論する。 

藤井


第4回 【経済政策とメディア 下】

老後資金2000万円問題を例にとって、「政策意図」がどう誤って伝えられるかを検証する。少子高齢化対策など経済政策にも、そうした曲解が入り込む余地があり、EBPを定着させるメディアの役割とは。

大林


第5回 【独禁政策とメディア】

GAFAに代表される米国の情報プラットフォーム企業に対し、世界的なバックラッシュが起きている。日本でも公正取引委員会が積極的にこの問題に取り組む姿勢を示し、いくつかの指導もし始めた。寡占かイノベーションか、古くて新しい問題を読み解く。

西條


第6回 【イノベーションと監視資本主義】

量子コンピュータの登場や通信技術のさらなる性能向上で、人間が体感する現実は拡張し続ける。メディアはどこに向かうのか、今後のイノベーションの道筋を占い、そこで重要になる普遍的な価値(人権、プライバシー、真実性など)とのバランスを考える

田中


第7回 【米国政治とメディア】

米大統領選とメディア、トランプ大統領とメディアの関係について、何が変わり、何が変わらなかったのかを解き明かす。放送法改正による中立原則の廃止や、地方紙の廃刊、新興メディアの興亡も含めて取り上げる。

大石


第8回 【ロシア政治とメディア】

プーチン政権とメディア支配について、ロシア国内を知らないとわからない事情を解説し、ロシア報道の難しさ、またIRAなど他国の政治に介入する「情報戦」の実態を明らかにする。

池田


第9回 【習近平体制とメディア】

異形の「監視国家」を築いた中国は、ネット社会の浸透を逆手にとって共産党独裁こそがデジタル社会に親和性があると思わせるような進化を遂げている。他方、香港は西側とメインランドの境界で、統治の困難さを浮き彫りにする。COVID19の流行では初期の病気の隠蔽が感染を深刻化させた一方で、湖北省の封鎖といった強権的な対応が、その後の拡散を抑制したとの評価もある。

中澤


第10回 【韓国政治とメディア】

革新派と保守派で分断された韓国社会はメディアそのものがくっきりと主張が分かれている。政権交代ごとに公共放送KBSのトップが変わるなど、地元メディアは政治に翻弄されている。日韓関係の修復に何が必要か、北朝鮮問題をどうとらえるか、メディアを通じて考える

峯岸


第11回 【東南アジアの政治とメディア】

タイの王室とメディアや中国の一帯一路とアジアの専制国家のメディア統制について論じる。中国の一帯一路政策と5Gの普及策とセットで各国に売り込まれており、そこで中国型の監視社会の導入も検討されている。ASEANは「1つ」でなく「1つずつ」とよく言われるが、それぞれの国の歴史も踏まえ、今後のあり方を読み解く。

飯野


第12回 【中東の混迷とメディア】

トルコのサウジ大使館で暗殺されたのはサウジのジャーナリストだった。サウジの石油施設の破壊は誰の仕業だったのか。「奇々怪々」の事件を報道するには記者としてどんな行動原理が必要か。ユニークなポジションを築いたアルジャジーラの評価も含め、過去の戦争報道も含めて読み解く。

松尾


第13回 【新型コロナをどう報じるか】

新型コロナウイルスの感染拡大はフェイクニュースなどデジタル社会の課題をクローズアップする契機になった。例えば①正解が存在しない科学の問題(コロナ感染抑止と経済活動の両立など)に報道はどう向き合うか②トレースアプリにみる人権・プライバシーと感染抑制のバランスをどうとるべきか③民主主義と資本主義、自由主義は中国型統制国家に敗れるのか〜〜といった課題だ。いずれも唯一正しいという答えがない問題だが、メディアはその前線で日々試されている

原田


第14回 【社説・論調の比較】

これまでの講義を踏まえ、各自の問題意識をもとに題材を選び、日本のメディア、欧米のメデイア、それ以外のメディアの社説を比較し、メデイアと政策形成がどう関わっているかを検証する。朝日VS読売といった国内メデイアの比較でもいいし、日韓の外交政策を日本のメデイアと韓国のメデイアを比べて論じる手法でもよい。デジタルメデイアと紙メデイアの主張がどう違うかも興味深い論点である

原田


第15回 【リポートの提出】

前回の社説の比較などを通じて、メデイアが政策形成に果たすべき役割をリポートで提出する。出典を明示したメデイアの社説や論調を取り上げて、それが政策形成とどう関わっているかを論じる。政策形成は政策の発信手法や世論のメデイアリテラシーにもかかわっており、自由主義や民主主義のありかたも含めて、よりよりメデイアの役割をリポートとしてまとめる

大石


15回目に相当するその他の授業計画