2020年秋学期 - 言語とヒューマニティ / LANGUAGE AND HUMANITY
|
C1108 言語とヒューマニティ LANGUAGE AND HUMANITY |
先端導入科目-総合政策-国際戦略 Frontier Courses (Intermediate) - Policy Management - International Strategy 2 単位 |
| 実施形態 | 完全オンライン |
| 開催日程 | 秋学期 水曜日1時限 |
| 担当教員 | 國枝 孝弘(クニエダ タカヒロ) |
| 関連科目 | |
| 開講場所 | SFC |
| 授業形態 | 講義 |
| 履修者制限 |
履修人数を制限する Only the selected students can take this course. |
| 履修条件 | |
| 使用言語 | 日本語 |
| 連絡先 | kunieda@sfc.keio.ac.jp |
| 授業ホームページ | |
| 同一科目 | |
| 学生が利用する予定機材/ソフト等 | |
| 設置学部・研究科 | 総合政策・環境情報学部 |
| 大学院プロジェクト名 | |
| 大学院プロジェクトサブメンバー | |
| ゲストスピーカーの人数 | 0 |
| 履修選抜・課題タイプ=テキスト登録可 | true |
| 履修選抜・選抜課題タイプ=ファイル登録可 | false |
| GIGAサティフィケート対象 | |
| 最終更新日 | 2020/07/21 16:00:49 |
科目概要
この授業では、主に人文諸科学的な見地から、現代社会の諸問題について考えていくことを目的とする。グローバリーゼーションの世界とは、単一の価値基準によってつながる世界であると楽観する前に、果たしてそもそも、人と人は理解しあっているのだろうか、という問いをたずさえることからこの授業は出発する。人と人がコミュニケーションを取るということは、そこに言葉が介在するのだが、その言葉は果たして無色透明な道具として機能するだろうか?また「人」と「人」と言う時、その「人」は果たして同じ価値基準をもって交流しているのだろうか?
この授業は以上のような問題意識にたち、現実の事象を扱う手前で、「言語」と「人間」の意味について哲学・文学・歴史・芸術といった観点から考察を加えていくつもりである。
授業シラバス
主題と目標/授業の手法など
主題;喪失と表現-体験が表現になるまで
内容:
私たちの人生は、何かを得てゆく過程であると同時に、絶えず何かを失う過程であると捉えることができる。愛する人の死のように私たちの大きく揺るがす出来事もあれば、老いをむかえるにつれ、体力や記憶が弱くなるといった自分自身の中の喪失もある。希望や情熱といった精神的なものの喪失もある。また震災のような突然の、不慮の死もある。
しかし私たちはどれだけこの絶対的事実を意識しているだろうか。私たちはそうした体験を得て初めて喪失という日常的な事実に気づくのではないだろうか。さらにはたとえ体験しても、その体験の意味を私たちはどこまで考えているだろうか。大概は借り物のことばで済ませて、自らその意味を深く考えることもなく、日常をやり過ごしていないだろうか。
この授業では、芸術体験を、そうした自動的に流れていく時間意識に抗し、生を新たな様相で捉える機会と考える。芸術は、私たちの生きる日常は、実は「こうでもありえる」と可能態として提示する行為であるとここでは定義する。具体的には喪失を喚起する機能を持つ芸術作品を取り上げて、その意義について考察する。
もちろん、大きな疑問も同時に起こってくる。文学や芸術という「作品」に、「現実」そのものを表現する力は備わっているのだろうか。ことばや絵画は、喪失という私たちにとって過酷な現実を前に、力が及ばないのではないか。あるいは逆に芸術こそが、私たちを幻想へと誘い込み現実を見る目を曇らせてしまうのではないか。こうした疑問を持ちながらも、「芸術にできること」を深く考察してゆきたい。
教材・参考文献
授業中に案内する。
提出課題・試験・成績評価の方法など
1) 授業感想レポート(10回):20点
毎回の授業時に授業の感想を書く。
2) 授業ミニレポート(2回): 20点
授業感想レポートを発展させる形でミニレポートを書く。
2) 中間レポート:20点
2000字以上のレポート
3) 最終レポート:40点
4000字程度のレポート
履修上の注意
授業計画
第1回 【塾内限定公開】イントロダクション
この授業の方法・目的・鍵となる概念などについて説明をする。
第2回 【塾内限定公開】理論編1:記号論と表象
この授業を進めるにあたって必要な、文学的、言語学的概念を整理する。第1
回目は記号論という分析手法について。
第3回 【塾内限定公開】理論編2:意味と解釈
言語がもつデノテーション、コノテーション概念を用い、芸術のもつ意味の二重性について考察する。
第4回 【塾内限定公開】理論編3:コミュニケーションと表現
この授業を進めるにあたって必要な、文学的、言語学的概念を整理する。第2
回目はコミュニケーションと表現について。
第5回 【塾内限定公開】理論編4:物語り行為と表現
この授業を進めるにあたって必要な、文学的、言語学的概念を整理する。第3
回目は物語り論という人文学の理論について。理論的にはアリストテレス、ポール・リクールを扱う。
第6回 【塾内限定公開】フロイト「喪とメランコリー」と3つの批判的考察
フロイト「喪とメランコリー」への3つの批判的考察を通して、喪の作業の意
味を芸術の次元において捉え返しをはかる。
第7回 【塾内限定公開】喪失と表現の考察
「家族をなくす」という喪失体験とその表現について考える。
第8回 【塾内限定公開】喪失と表現の考察
戦争、紛争など死にとりまかれるこの時代を現代芸術はどのように表象してい
るか。またその表象のもたらす意味は何か。芸術の社会性という観点から、複
数の作品を扱い、喪の表象の可能性について考察する。
第9回 【塾内限定公開】手記を書くことの意味 『3.11.慟哭の記録』を読む
3.11を中心として、震災という出来事をもとに生まれてきた芸術作品における
表現を考える。
第10回 【塾内限定公開】75年後の原爆の表象
原爆投下から75年たったいま、私たちはこの体験者がいなくなる出来事をどう表現していけばよいのかを考える。
第11回 【塾内限定公開】東日本大震災と写真という表現
表現者はある災厄があったときに、それをなぜ表現しようとするのか、そしてどのように表現しようとするのかについて考察する。
第12回 【塾内限定公開】危機の時代と想像力
現実の危機、災厄にたいして、文学的言語は意味をもつのか。大江健三郎の
論に依拠して、災厄の時代における人間の批判的想像力の役割について考え
る。
第13回 【塾内限定公開】表現者は何をどのように表現したか?(2)
これまで扱えなかったアーティストたちの活動を振り返る。
第14回 【塾内限定公開】今学期のまとめ
これまでの授業を振り返る
第15回 芸術概念のまとめ
この授業からさらに敷衍して考えるための概念を紹介する。
15回目に相当するその他の授業計画
* 災厄とディスクール* ここまでの授業を振り返り、災厄を表現することの芸術的可能性についてまとめる。