2020年秋学期 - 研究会B / SEMINAR B
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A1102 研究会B SEMINAR B |
研究プロジェクト科目 Research Seminars 2 単位 |
オーラル・ヒストリー―「聞く力」で未知を拓く―
Oral History
| 開催日程 | 秋学期 木曜日4時限 |
| 担当教員 | 清水 唯一朗(シミズ ユイチロウ) |
| 関連科目 |
前提科目(関連): B6016 |
| 授業形態 | ディスカッション、グループワーク、演習 |
| 履修者制限 | |
| 履修条件 | |
| 使用言語 | 日本語 |
| 連絡先 | yuichiro@sfc.keio.ac.jp |
| 授業ホームページ | http://shimizulab.wordpress.com/ |
| 設置学部・研究科 | 総合政策・環境情報学部 |
| 大学院プロジェクト名 | |
| 大学院プロジェクトサブメンバー | |
| ゲストスピーカーの人数 | |
| 履修選抜・課題タイプ=テキスト登録可 | false |
| 履修選抜・選抜課題タイプ=ファイル登録可 | false |
| GIGAサティフィケート対象 | |
| 最終更新日 | 2020/07/04 00:08:50 |
研究会概要
目的・内容
*【開講にあたって】*
この研究会のテーマは「聞く」こと、もしくは「聴く」ことです。これまで研究の材料とされてきた文字資料や数字のデータは、どこか硬く、乾いていて、物足りなく感じたことがないでしょうか。とりわけ人を相手とする研究では、人の温度を感じるようなものが欲しくなるのは至極あたりまえのことに思えます。そこで「語る」「聞く」という。とても単純でありながらコミュニケーションを基調とした実感のある作業を通じて、研究を、そして未知を切り拓くことを考え、実践していく研究会をはじめました。
*【オーラル・ヒストリーをはじめとした、様々な「聴く」】*
わからないことをわかる人に聞くわけですから、方法としてはとても単純で明快です。対象は、政治家、官僚、財界人といった著名人から一般のひとびとまで、人生のベテランから子どもまで、「語る」ことのできる相手は誰でも「聞く」相手となります。誰もが取り組むことができ、それ自体にコミュニケーションの面白さを内包した方法、それが「聴くこと」です。
2009年にこの研究会を立ち上げたときは、「オーラル・ヒストリー」という手法にこだわりがありました。それが研究会のメンバーと取り組みを続けてくるなかで、聞き書き、半構造化インタビュー、アクティブ・インタビュー、インタラクティブ・インタビューと、広がりを見せています。今は、それぞれが自分の目的に応じて、多様な手法を使い分けるようになりました。
*【そして、この研究会の目的は。】*
こう話してくると、なんだ、材料集めのインタビューかと思われるかも知れません。そう、その通りです。しかし、それだけでもありません。オーラル・ヒストリーは聞き手に仮説を与え、今まで見えなかった問題構造を目の前に開き、新たなる論理を与えてくれます。そして時には「語ること」「聴くこと」自体が問題解決の大きな手段となっていきます。
そしてもうひとつ、聞く力なくしてオーラル・ヒストリーは行えません。そして、聞く力を鍛えることは、想像する力と書く力を伸ばすことにつながっていきます。何より、語りを紡ぎ出していくことは、楽しく、想像を越えてエキサイティングなものです。「聞く力」を身につけ、語りを楽しみ、記憶と認識の構造を引き出していくことによって、ひとりよがりの視野をぐっと広げて、研究の糸口をつかんで深めていくことができるようになります。それがこの研究会の目的です。
*【この研究会が想定しているメンバー像】*
- 「語る」「聞く」「聴く」ことに関心のある人
- 人の話を聞くのが好きで、それを何かに活かしたい人
- 文字や数字だけを相手にする研究にいくらか疲れた人
*【研究会を進める上での三つの軸】*
上記の目的を達成するために、本研究会では3つのアプローチに取り組んでいきます。
1. オーラル・ヒストリーを身につける
まずなにより、オーラル・ヒストリーの方法を身につけ、洗練させていく必要があります。ただ聞くだけでは、さすがに研究にはなりません。このため、いくつかの優れたオーラル・ヒストリーを読み、これまで積み上げ磨かれてきた方法論を自分の経験に照らし合わせ、これらを材料にディスカッションを行なっていきます。この過程を経て、自らの研究プロジェクトに合った「聞く」方法をつかんでいきます。
2. オーラル・ヒストリーを自分のプロジェクトととしてやってみる
とはいえ、オーラル・ヒストリーは「動」の手法です。座って勉強しているだけでは何もはじまりません。そのために、自らの研究プロジェクトとしてオーラル・ヒストリーを実践する必要があります。この準備、実践、レビューについて、他のメンバーとディスカッションしながら進め、洗練していきます。もっとも、担当者はオーラルで得られた情報のみで研究を組み立てることは、楽しさと同時に危うさを持っていると考えています。可能な限りの文字情報、数的根拠があってこそ、オーラルは活きてくるものです。
この個人研究プロジェクトが本研究会のメインになります。ゼミのメンバーは、オーラルを軸に「聴くこと」そのものから、政策、地域、起業、仕事、記憶、組織、文化、家族、心理、信仰など幅広いテーマに取り組んできました。まったく異なるテーマのメンバーが一同に解することで生まれるリエゾンもおもしろいと思っています。それこそがSFCでこうした「方法」を軸にする研究会を行う意味かもしれません。
3. オーラル・ヒストリーをさらなるプロジェクトに展開してみる
くわえて、もう少し広がりのある話をひとつ。せっかく同じ手法をもって研究に臨むメンバーが、個々の研究だけに取り組んでいてもつまらないし、何よりもったいないですよね。よって、研究会から希望者を募り、子どもが高齢者に地域の記憶、学校の記憶を聞く参加型・世代間交流プロジェクトを試行的にはじめていました。この研究会で行っていたインターンからスピンアウトした小布施若者会議のようなプロジェクトもあります。
最近のものではNPO法人「青春基地」さんとコラボして高校生向けのインタビュー・ワークショップを展開しています。
[http://seishun.style/seishun/839/]
*【研究テーマについて】*
研究手法を共有する研究会ですから、研究・プロジェクトのテーマは問いません。むしろ、手法を共有しながら多様な研究に取り組むことで生まれるリエゾンが面白いと思っています。実際、オーラルヒストリーは政策だけでなく、文化、伝統、組織、企業、生活、医療、家族、技術開発などあらゆる分野で活用されています。テーマについて不安がある場合は、事前に担当教員に相談してみてください。これまでの研究テーマはゼミWEB( [http://shimizulab.wordpress.com/] )の「研究成果」を参照してください。
参考:SFC CLIPさんによる記事 手法で広げる学問の領域 清水唯一朗研究会「オーラル・ヒストリー」 [http://sfcclip.net/column2012070601]
*【オープンなゼミ(2018年度から実施)】*
2018年度から、外部ゲストメンバーの単回参加をはじめました。昨年はメディア、インタビュアー、起業家、コンサル、編集者、若手研究者、高校生が参加されました。外部ゲストメンバーが参加された日は、終了後に交流会を開き、現場でのお話を伺っています。
そのほか、2019年度はゲスト講師として土門蘭さん(小説家)、柳下恭平さん(編集者)、岸政彦さん(社会学者、作家)、野村愛さん(CAREER HACK)、廣川那佳さん(MONOGUSA)、山口祐加さん(料理研究家)、村田智士さん(日立製作所)にもお越しいただきました。
(写真は秋学期初回のゼミ。初回は屋外で行うのが恒例になっています)
English Version to be announced.
評価方法
出席、報告、討論を始めとするコミットを総合的に評価します。
Assess your commitment comprehensively.
教材・参考文献
- <「聴く」ことについての基礎的文献>
- 御厨貴編『オーラル・ヒストリーに何ができるか』岩波書店、2019年
- 御厨貴編『オーラル・ヒストリー入門』岩波書店、2007年
- 鷲田清一『「聴く」ことの力』TBSブリタニカ、1999年
- S.ブラックモア『「意識」を語る』NTT出版、2009年
- M.P.ニコルズ『聴くちから』VOICE、2005年
- 清水唯一朗「オーラル・ヒストリーの可能性」立命館大学、2009年
- 清水唯一朗、諏訪正樹「オーラルヒストリーメソッドの再検討」『SFC JOURNAL』14巻1号、2014年
- 中原淳『知がめぐり、人がつながる場のデザイン』英治出版、2011年
- E.T.ストリンガー『アクション・リサーチ』フィリア、2012年
- <オーラル・ヒストリーの方法を体得する>
- ヴァレリー・ヤウ『オーラルヒストリーの理論と実践』インターブックス、2011年
- ポール・トンプソン『記憶から歴史へ』青木書店、2002年
- ジェイムズ ホルスタインほか『アクティヴ・インタビュー』せりか書房、2004年
- U.フリック『新版 質的研究入門―人間の科学のための方法論』春秋社、2011年
- 佐藤郁哉 『フィールドワークの技法』新曜社、2002年
- 永江朗『インタビュー術!』講談社現代新書、2002年
- 岸政彦ほか『質的社会調査の方法』有斐閣、2016年
- 小田豊二『聞き書きを始めよう』木星舎、2012年
- <オーラル・ヒストリーの活用例として>
- 岸政彦『断片的なものの社会学』朝日出版社、2015年
- 土門蘭『経営者の孤独。』ポプラ社、2019年
- 西岡常一ほか『木のいのち 木のこころ』新潮社、2005年
- 後藤春彦ほか『まちづくりオーラル・ヒストリー』水曜社、2005年
- 宮徹『ファミリーヒストリー』WAVE出版、2015年
- S.ターケル『仕事!』晶文社、1983年
- 西村佳哲『自分の仕事をつくる』筑摩書房、2009年
- 森岡正芳『臨床ナラティヴアプローチ』ミネルヴァ書房、2015年
- 『N:ナラティヴとケア』6,7号
関連プロジェクト
課題
以下の3点をまとめ、担当者宛てメールにて送付し、面談のアポイントを取ってください。
1. なぜこの研究会に入りたいのか(理由、テーマなど)
2. 私はどんなひとか、なにをしてきて、なにをしたいのか(自己紹介をしてください)
3. これまでであなたが大きく影響を受けたもの(本、ひと、メディアなどなど)
Send email and make an appointment for interview.
Write these three contents.
1. Reason for join this seminar.
2. Self-introduction
3. What's you influenced by.
来期の研究プロジェクトのテーマ予定
秋学期は、春の成果をもとに、個人、もしくはグループによる研究を進めていきます。
その他・留意事項
希望者参加型のプログラムとして以下のものを予定してます(研究会1と合同で開催)
- インタビューワークショップ(NPO法人「青春基地」さんと)
- 沖縄県高校生とのワークショップ(沖縄県教育委員会と)
- 小布施町プロジェクト「まろん大学」
- 社会人セッション(人生の先達の話を聞きます)
- 吉野作造記念館人材育成研修会(9月ごろ、宮城県にて。東大、京大、東北大とのインカレ)
- 神田神保町ブックトリップ(10月ごろ)
- SFC-ORFへの出展(11月)
なお、担当者は1年を最低単位として研究会をデザインしています。腰を据えて研究することで、地に足のついた、深い理解を得てもらいたいからです。よって、履修者は通年での履修が前提であることを踏まえておいてください。
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