A1101
研究会A
SEMINAR A
研究プロジェクト科目
Research Seminars
4 単位

身体と環境にむきあい、知をデザインする生活
Designing life knowledge in practice

開催日程 秋学期 火曜日4時限,火曜日5時限
担当教員 諏訪 正樹(スワ マサキ)
関連科目 前提科目(推奨): B6048,B6011,B6148,C2029
授業形態 ディスカッション、グループワーク、演習
履修者制限
履修条件

使用言語 日本語
連絡先 suwa@sfc.keio.ac.jp
授業ホームページ http://metacog.jp/
設置学部・研究科 総合政策・環境情報学部
大学院プロジェクト名

大学院プロジェクトサブメンバー

ゲストスピーカーの人数
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GIGAサティフィケート対象
最終更新日 2020/07/07 12:46:52

研究会概要

目的・内容

*諏訪研の研究目的*

「身体と環境にむきあい」、身体の固有性や個人が置かれている状況に依拠した「多様なる知の姿」を丹念に記述し、自分なりに意味のある知をデザインする実践研究を行うこと。

*キーワード(重要概念)*

身体知、コミュニケーション、学び、デザイン、一人称研究、間合い、からだメタ認知

*補足説明*

「身体と環境にむきあおう」とするとき、それは、頭だけでその方法を考えるのではない.身体に生じる体感を自覚し(身体の声を聴き)、それをじっくりとことばで表現し、体感とことばの関係を探究してみようということである.

専門語で言えば,「からだメタ認知」という探究方法論である.ことばで表現するからと言って,自分の身体を分析して解明しようというのではない.ことばにするからこそ,様々な意識がつながり関係性が理解でき始めるとともに,更に謎は深まるのである.身体を考えるとはそういう行為かなと考えている.(参考文献[0][1][2][7])

より学問的な香りのする言葉で表現すれば, 認知科学的/アフォーダンス的な視点から,身体・生活・学びの場の”デザイン”を行う方法論を模索する研究室である.生活や学習の場のすべては身体に根ざしている.「身体を考える生活」とは,いまいちど自らの身体に目を向けて,生活や学びの場を考え直してみよう(参考文献[0][7])というメッセージを込めたフレーズである.

知はデザインするものである。他者が見出し紹介している知識をひょいと持ってきて使おうなんて思っても、自分の生活に役に立つとは限らない。自分のために、自分にとって意味のある知を、自分で編み出して生活のなかに位置づけることが、知をデザインするということである。詳しくは参考文献[1]をご覧いただきたい。


*問題意識*

認知科学や人工知能は、ひとの知能を探究する学問領域であるが、これまでの研究の営みは本当の意味で「生きているひと」の知能や知性の探究になっていないと感じている。その第一の原因は、客観的なデータだけに依拠していることであろう。諏訪は、ひとの学びや、学びの場をデザインすることを専門にする研究者であるが、学びを駆動するものは本人の内なる意識である。意識は、客観的に外部から観測することだけでは捕捉できない。

第二の原因は、普遍的な知見を得る手段があまりよろしくないことであろう。実験心理学の研究分野でよくあるが、被験者をとりあえず多数集め、そのデータのなかに共通構造を見出すことで普遍をめざす。しかし、本来ひとは背景も性格も、したがって内的意識も異なる。本人ならではの個人固有の知のなかにも、注目すべき面白い「知の姿」はあるはずである。しかし、上記の方法では、それは個人固有であるという理由で捨象されてしまう。

本来、知の姿は多様なのである。多くの被験者に共通する構造を求めることで判明することも多い(例えば、モノとしての身体に関わることは、その一例であろう)が、特に意識がかかわる知の側面に関しては、共通構造を見出すやり方ではその多様性をみつけることはできないと考える(「一人称研究」の考え方は、[0][1][2]を参照のこと)。


*諏訪研の研究テーマ一覧(例)*

 1. 身体スキルの生活実践および学び
 2. 身体スキルのコーチング方法論の開発
 3. 感性知を育む手法のデザイン
 4. 体感や経験を記述するための言語化手法の開発
 5. 間合いの探究
 6. 自分らしさを演出する方法のデザイン
 7. コミュニケーションの秩序の解明と、そのための場のデザイン
 8. 創造プロセスの解明/伝承/触発支援
 9. 場をデザインするメディアとしての文房具プロジェクト
 10. 身体計測(筋電,姿勢,発声など)に基づく即時フィードバックによるスキル支援
 11. 生活実践知を伝承する手法のデザイン
 12. 言語の学び環境のデザイン


ーーーー

詳しくは諏訪研HPを参照して欲しいが、以下、簡単に説明する。

(1)一人称研究

人工知能学会誌の2013年9月号で、諏訪と堀浩一氏(東大)が編集した特集号「一人称研究のすすめ」において初めて提唱された概念である。その後その内容をよりbrush upし、著書としてまとめた[2]。最終的には、普遍性のある知の姿をみつけることがゴールであることに違いはないが、いきなり普遍性をもとめるのではなく、まずは、一人称の知の姿を記述して、そこに面白い知の姿をみつけてみようという考え方である。まずは被験者の数(N)は1でよいという考え方である。

従来研究では、「それは面白そうだけど、N=1だよね。それじゃあ、普遍的な知見とはいわず、ただ単にひとりのひとに成り立っただけじゃない」として、研究の評価を下げる(研究としての価値を認めない)風潮が支配的であった。そんなことを言っているから、知の研究は進まないのである。特に、暗黙的な知であればあるほど、こういう従来研究手法では解明できない。

一人称研究とは、個人の固有性(身体、性格、生活背景)や、個人が置かれた特殊な状況における知の姿を、客観的な外部観測データだけでなく、本人目線のデータ(主観的なデータ)も併用して、暴こうとするものである。そして、N=1であっても、そこに面白そうな知の姿を発見しようと目指すものである。人は多様である。状況も多様である。したがって、一人称研究でみつかる知の姿も、当然のこととして多様であろう。多様な知の面白い姿をみいだすことを研究のスタートにしようというわけである。

そうやって見つかった「知の姿」を検索クエリーにして、N=2番目、3番目,,,をみつけに行く。そうやって一人称研究でみつけたN=1のなかのいくつかの知見は、普遍性を獲得することになる。最初から被験者をたくさんあつめて共通構造を見出す方法とは、まるで異なる面白い知の姿が出現することであろう。

N>=2以上を見出すところまでを、ひとりの研究者がひとつの論文でやる必要はない。面白い(それは研究者及び論文の査読者のの主観的判断でよい)という条件付きで、N=1でも十分論文としての価値がある。学会で有名になったN=1の知の姿は、研究者が皆でこぞってN=2以上を探しにいけばよい。

参考文献[0][1][2][3][4][5][8]



(2)からだメタ認知

詳しくは諏訪研HPに譲るが、ここでは簡単に触れる。

身体知の学びの方法論である。からだがやっていることや体感を、少しずつことばで表現することを通じて、からだに対する新たな着眼点を獲得し、からだとことばが共に進化するという共創を生じさせるという手法である。つまり身体知を学んだ暁には、からだだけではなく、ことば(つまり内的意識)も進化している。それは、世の中を全く新しい眼でみているということである。

身体知とは、からだに根ざした知のことである。しかし、それは、身体を明示的に駆使する(例えばスポーツにおける身体スキル)ものごとだけでない。諏訪は、ほとんどの知が身体知であると考えている。例えば、算数の四則演算という概念的な知も、子どものころに、おやつをどう分配するかという悶々とした(笑)実生活の文脈で、からだで学ぶのである(参考文献[0][1][2][6][8])。

からだメタ認知は、本人が身体知を学ぶための方法論であるとともに、研究データを得る手法でもある。何かを熟達する過程で、本人はからだを語ることになる。そのデータは、内なる意識のデータとして残る。主観的なデータである。(1)で述べたように、これまでは、そういう主観的データを捨象する(価値を見いださない)風潮があった。もちろん、本人の身体が(身体の動きが)どう変わって行くかという客観データをとることも必要である。しかし、学びがからだとことばの共創であるとするならば(この仮説に異論を唱える研究者がいるとは思えないが)、主観的データと客観的データの両方をつかって、本人の変化を観察すべきであろう。

そうした観点から、からだメタ認知は、一人称研究を支える重要な研究手法でもある。

更に、からだメタ認知は、スキルのコーチング方法論の礎になり得る理論でもある(これについては、諏訪の著書[1]を参照のこと)。

(3)構成的探究手法および(4)デザインに関しては、HPをみてください。

Objectives

(1) Feeling and thinking what the own body does and feel,
(2) describing what conditions and history the current body is rooted in,
(3) finding various aspects, structures and processes of intelligence, and thereby
(4) designing own ways of life knowledge in practice

評価方法

日頃のプロジェクト、研究会での発言/議論の様子をみて総合的に評価する

教材・参考文献

諏訪研HPに多数掲載。

上記記載の文献だけはここに記す。
[0] 諏訪正樹. (2016). 「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学. 講談社.
[1] 諏訪正樹, 藤井晴行. (2015). 知のデザイン:自分ごととして考えよう. 近代科学社.
[2] 諏訪正樹, 堀浩一(編著), 伊藤毅志, 松原仁, 阿部明典, 大武美保子, 松尾豊, 藤井晴行, 中島秀之. (2015). 一人称研究のすすめ:知能研究の新しい潮流. 近代科学社.
[3] 諏訪正樹,堀浩一 編.(2013).特集「一人称研究の勧め」にあたって,人工知能学会誌,Vol.28, No.5, pp.688.
[4] 諏訪正樹.(2013).見せて魅せる研究土壌―研究者が学びあうためにー,人工知能学会誌,Vol.28, No.5, pp.695-701.
[5] 諏訪正樹,堀浩一,中島秀之,松尾豊,松原仁,大武美保子,藤井晴行,阿部明典.(2013).一人称研究にまつわるQ&A,人工知能学会誌,Vol.28, No.5, pp.745-753.
[6] 諏訪正樹.(2012).“からだで学ぶ”ことの意味 ―学び・教育における身体性―」.SFC Journal,“学びのための環境デザイン”特集号, Vol.12, No.2, pp.9-18.
[7] 諏訪正樹. (2018). 身体が生み出すクリエイティブ、筑摩書房.
[8] 諏訪正樹、伝康晴、坂井田瑠衣、高梨克也. (2020). 「間合い」とは何か 二人称的身体論、春秋社.

関連プロジェクト

http://metacog.jp/projects/lkip/index.html

課題

来期の研究プロジェクトのテーマ予定

上記に記載

その他・留意事項

3年生前期(も含めて)までに初めて履修することが好ましい(卒プロが始まる準備として認知科学の様々な重要概念を学んでおく必要があるが、それに最低約1年はかかると考えているため)。

授業スケジュール

基本的に、研究会は、諏訪が指定する課題を皆で共同で解決し、議論、発表を繰り返すというスタイルで進む。
毎回グループワークが必要なので、研究会授業の時間だけやればよいというわけではない。一週間のあいだに、学生同士が集まって議論を交わし、プロダクトをつくるということが求められる。

またそれとは別に、各個人が、3、4年生に向けて自分に興味のある研究分野を探し、諏訪研プロジェクトとして、もしくは個人研究として、なんらかの「小さな研究」を進めることを必須とする。

したがって、非常に忙しい研究室である。
意欲と継続力が旺盛な学生を求む。